コンパクトなデュアルフットスイッチ自作
久々にGT-1をいじっていたら拡張フットスイッチがあると便利だなと思いました。もともとGT-1ではCTL1とEXペダル(踏み込みスイッチ)、UP・DOWNの4つフットスイッチがエフェクトのオンオフに使えます(※UP・DOWNのパッチ切り替えはツマミに割り当て可能)。現状その4つでまあ十分なのですが、エフェクト切り替えを複数使いながらパッチ切り替えを足下で行いたくもあります。
外部フットスイッチの購入も検討しましたが、定番のBOSS FS-6やFS-7はやや大きく、他社製のコンパクトなAMPERO SWITCHなどはスイッチの極性が異なるらしいので、自己満で小型かつ機能を詰め込んだものを自作してみました。
機能
基本はBOSSのFS-6 (FS-7) のようなデュアルフットスイッチを作りました。
- モーメンタリータイプ
- ステレオケーブル1本・モノラルケーブル2本両対応
- 極性(polarity)切り替えスイッチ付き
- 左右入れ替えスイッチ付き
- 踏んだ際にLED点灯
1, 手持ちのGT-1の他、マルチエフェクター、ディレイ・ルーパーなどのデジタルエフェクターで使えるモーメンタリー(アンラッチ)型のスイッチにします。2, GT-1に接続する場合はステレオケーブル1本が最も合理的ですが、今後別のエフェクターで使うことも考慮しモノラル2本出しにも対応させます。3, BOSS製エフェクターではノーマルクローズ(ノーマリークローズ)の極性が適合します[1][2]が、今後の拡張性も考慮し逆のノーマルオープン(ノーマリーオープン)にも対応させます。4, どの向きに置いても2スイッチが直感的な配置になるように入れ替えスイッチ(すなわちTip-Ring入れ替えスイッチ)にも対応させます。また、FS-6やFS-7ではAスイッチがTRSフォンのRingに、BがTipに対応します[2][3]が、類似品のAMPERO Switchはその逆でAがTip、BがRingとなっています[4]。入れ替えスイッチでBOSS以外のマルチペダルにも対応させます。5, 目視でもスイッチ作動がわかるように踏んだ際にLEDを光らせます。
製作
レイアウト
基本的なレイアウトは以下のサイトをを参考にしています[5]。図上部にLEDとその関連部品を追加し、LED点灯のためフットスイッチを2PDT(実際には部品調達の関係で3PDT)スイッチに差し替えました。また、モノラルケーブル二本出しのために図左下部にモノラルジャックを追加しています。以上の2点のみが変更(追加)点です。参考にしたレイアウトと本質的には変わりません。

BOSS FS-6(FS-7)フットスイッチを自作する
楽しく練習するために昨年からBOSS Loop Station RC-3を使用しています。......
また、LEDについては、以下の動画を参考にDCジャックのマイナスとフットスイッチとをつないでいます[6]。エフェクター用の9V電源から分岐して電源を取るためDCジャックはセンターマイナスの配線です。レイアウト図上には示せていませんが、踏み込んだ時に点灯させるのでフットスイッチのノーマルオープン(ノーマリーオープン)側端子にLEDを配線しています。参考動画との相違点として、左右のスイッチで別の色のLEDを点灯させるため、抵抗とLEDを一つずつ追加し各セットを電源に対し並列接続[7]しています。なお、アンラッチ式なので足を離すと消灯します。また、電源に繋がなくてもエフェクトの切り替えには影響しません。
※ちなみに、A-B入れ替えスイッチが不要・LEDも不要なら次のサイトのシンプルなFS-6クローン[8]が参考になります。

Boss FS-6 Clone: Build Your Own
Boss FS-6 Clone: Build Your Own: This is an explanation of how to create your own Boss FS-6 footswitch. Most Roland guitar amplifiers and …
材料
- ケース(タカチ TD4-9-3N)
- 3PDTフットスイッチ(モーメンタリー)×2
- 6.3 mm ステレオジャック(MJ-161M)
- 6.3 mm モノラルジャック(MJ-159M)
- スライドスイッチ(2回路2接点)
- スライドスイッチ(1回路2接点)×2
- 2.1 mm 標準DCジャック(MJ-14)
- 3 mm径LED (赤・黄緑)
- 抵抗4.7kΩ×2
- なべ小ねじM2x5(スライドスイッチ取り付け用)
- 六角ナットM2x0.4(スライドスイッチ取り付け用)
- 配線材
上述の通り、フットスイッチは3PDTでなく2PDTでも接点数は足りますし後者の方がスペース的にも余裕ができます。
今回、画像内の部品は合計価格と送料・取り扱いパーツの関係で全て秋月電子の通販で買いました(特に、安価なスライドスイッチは秋月以外では見当たりませんでした)。工具や配線材など手持ちのものを除くと、今回購入したパーツは送料含め約3200円でした(実際には予備パーツも購入したのでもう少しかかっています)。
作業
マスキングテープで保護し、穴の位置をマーキングしました。マーキング精度が微妙なので色々とずれてます。 手持ちのドリル(最大 6 mm )より大きい穴はドリルで下穴を空けた後ハンドリーマーで拡張しました。リーマー上のおおよそ目的の径の位置にテープを貼っておくと拡げ過ぎを防げます。
棒ヤスリでバリ取りをしました。ここでも穴径が若干拡がるので、リーマーでの穴拡張の段階では削りしろを残しておきます。
各パーツを仮合わせします。精度が悪く、スライドスイッチのネジ穴位置が微妙にずれていたのでヤスリで穴を横に拡げ微調整しました。
穴あけ完了したケースがこちら。
スライドスイッチ用の角穴はいびつになってしまってますが、最低限スイッチが収まるのでOKです。妥協です。
配線も半田付けも非常に下手です。見せたくないです。スイッチとジャックを全て同じ側に配置したせいでかなり無理が生じています。順番的に、LEDを全て先に配線してしまえば良かったと反省しています。
完成
ケースに収めてしまえば見た目はそれなり。よく見るとずれが気になりますが。
スライドスイッチは画像向かって左側にすると全てBOSS仕様(極性はFS-7でいうPolarity Ⅰ)になるように配置しました。全て右側にするとHOTONE AMPEROシリーズやLine 6製マルチ(Helix, HX, POD など)用の外部スイッチ仕様になります。また、底面に滑り止めとしてダイソーのクッションゴムを貼りました。
GT-1と比べるとかなりコンパクトでボードの空きスペースにあわせ柔軟に対応できそうです。意図したわけではありませんが、スイッチどうしの間隔はGT-1の各スイッチ間隔とほぼ同じになりました。
使用感
小さい筐体に詰め込みましたが、意外と安定感があり踏んで傾くこともなさそうです。また、スイッチどうしの間隔も筆者的にはGT-1相当で十分です。秋月のモーメンタリーフットスイッチ(COSLAND製。中国メーカーらしいです。)は硬めのクリック感(しっかりした筐体にはめ込まないと押しづらいくらいの硬さ)で踏み込んだ感覚がしっかり伝わります。ただし、モーメンタリーとはいえタップテンポに使うには難しい硬さだと思います。また、クリック音も響くのでアコースティックな曲中での使用にはやや不向きかも。
LEDは赤・緑で明るさが異なるのが少し気になります。順電圧が同じなのでどちらにも同じ値の抵抗を繋ぎ電流値をそろえました(計算値・計測値ともに約1.5 mA )が、データシートを確認し直したところ光度に3倍ほど差がありました。光度の差に応じて抵抗値・電流値を調整すると良かったかもしれません。
GT-1でパッチ・エフェクト切り替えを設定してみましたがレスポンスは良好です。設定してみて気づいたのですが、GT-1ではフットスイッチB (Tip) にCTL2が、A (Ring) にCTL3が割り当てられます[1]。自分的には直感に反するのですが、技術的・文化的な慣例などがあるのでしょうか?このあたりを自分の都合に合わせるためにもA-B (Ring-Tip) 入れ替えスイッチを実装して良かったと思います。
細長いので縦置きにしてもコンパクトにボードに収まりますが、FS-7のように傾斜がついていないのでA, Bスイッチの踏み分けが難しいです。ナット・ワッシャーをケース内側にも追加し片方のフットスイッチの飛び出る高さを下げ、2フットスイッチの高さに差を付け傾斜の代わりにするという手もアイデアとしては考えられます(下図)。
製作を終えて
作業は全てドライバー付属のラチェットハンドル+ドリルビットで穴あけした他、リーマーやヤスリがけも全て手作業だったのでかなりの労力でした。電動ドリルを使うべきという数多の声には素直に従うべきです。
今回はスライドスイッチ調達の関係で秋月電子のフットスイッチを使いましたが、本当はタップテンポでも使えるようなソフトタッチのものが良かったです。ただ、ソフトタッチのモーメンタリースイッチで2PDT以上のものは1個1000円以上するものばかり(例として桜屋電機やGarrettaudio)で、自作で安価に……という意味が薄れてしまうのがなかなか難しいところです(とはいえ、極性切り替え・A-B入れ替えがある市販品は見当たらず筐体サイズもある程度自由なので高くても自作する価値があるにはあります)。AmazonにはSPSTであればソフトタッチのものが安価であるので、極性切り替えとLEDのどちらも不要ならこれを使うという手もあります。
穴あけの精度が低く半田付けも下手なので見た目は悪いですが、しっかり動作するものができたのでとりあえず満足です。ただ、半田付けや配線が下手なので耐久性がどれだけあるかが問題です。(私は曲中にパッチ切り替えはしないので)ひとまずパッチ切り替えを割り当てておけば、最悪GT-1本体のノブでも操作できるので安全かなと思います。※ただし、BOSS仕様のノーマルクローズで使用中にスイッチが壊れたり配線が切れた場合、オープン判定になって長押し状態になる危険があります。やはりBOSS以外の仕様の方が配置も直感的だし壊れたときもスイッチが効かなくなるだけである意味安全な気がしています。
同様の物の製作事例はネット上に複数ありますが、今回の機能を全て詰め込んだものは見つからなかったので参考になればと思います。また、音質は全く関係しないのでエフェクター自作の練習や初めての機材自作にもおすすめです。
参考資料
- [1]GT-1取扱説明書
- [2]FS-6取扱説明書
- [3]FS-7取扱説明書
- [4]HOTONE | AMPERO SWITCH+ | モメンタリー・フットスイッチ | 製品情報
- [5]BOSS FS-6(FS-7)フットスイッチを自作する/craftsman-エフェクター自作、ギター、その他工作ブログ- | もしもギタリストの趣味が工作だったら
- [6]オリジナルフットスイッチの製作方法を徹底解説!別動画でモディファイ済のZoomマルチストンプもコントロール可能!(エフェクター用 モーメンタリ・スイッチ) - YouTube
- [7]LEDの使い方&選び方 | マルツオンライン
- [8]Boss FS-6 Clone: Build Your Own : 7 Steps - Instructables