便利グッズに目がないnamimoriです。
今回は、モバイルバッテリーや充電アダプターなどのUSB DC5Vポートを楽器エフェクター用のDC9V(センターマイナス)に電圧変換するCUSTOM AUDIO JAPAN (CAJ)の「Power Cable USB/DC9」を購入・使用したので紹介・レビューします。
2023年11月追記:USBコネクタ部・DCプラグ部を小型化し新ケーブルを採用した後継版"Ⅱ"が発売され、旧版は終売となりました(公式サイト)。基本スペックは同じですが本記事は旧版を購入・使用してのレビューです。
スペック・特徴
メーカー公表のスペックと注意点
主なスペックは以下のとおりです。(公式サイトより)
- ケーブル長:80cm
- 出力:DC 9V センターピン 2.1mm (-)極性
- 最大電流容量:1A(使用パワーサプライにより異なる)
ケーブル長は80cmと電源アダプター用としては短めなので、USBポートが近いデスク上での使用やモバイルバッテリーでの使用を想定した製品と思われます。エフェクターボードにモバイルバッテリーを組み込む場合には十分な長さです。
また、最大電流容量は1A @9V なので、電力の単純計算でパワーサプライ側は最大1.8(+ロス分)A @5V 必要となります(90%の効率として2A、80%だと約2.25A、70%だと約2.6A)。電流を最大限引き出すのに電源側はこれを満たす必要があるので、PCのUSBポートや古い機器用のUSB充電器などを使う場合は注意が必要です。スマホ・タブレット充電用のUSB電源アダプタやモバイルバッテリーの方が良いと思われます。[注1]
また、メーカーの修理保証が1年あります。(箱・代理店公式サイトより)※サウンドハウスで購入すると3年保証になります。基本的に国内最安値ですし、独自ポイント・クーポンを使いたいときや現物を見たいときなどを除けば基本的にサウンドハウスでの購入がおすすめです。
電圧測定値(参考)
手持ちのテスター(誤差: ±0.5%rdg, ±2dgts)で電圧を測定すると無負荷時9.35~9.36Vでした。これは手持ちのどのUSB電源アダプタおよびモバイルバッテリーに繋いでも全て同様の値となりました。
また、手持ちの他の楽器用9Vアダプターの電圧(無負荷時)との比較は以下の表の通りです。Power Cable USBはやや高めの電圧となっています。
メーカー・機種 | 電圧 (V) |
---|---|
CAJ Power Cable USB/DC9 | 9.35 |
Jim Dunlop ECB003 | 9.13 |
BOSS PSA-100P | 9.01 |
ただし、エフェクター使用時・高負荷時にどれだけ電圧が安定するかはこの測定だけではわかりません。あくまで参考程度としてください。また、後継版のⅡではUSBコネクタ部が小型化されたため中の昇圧回路やパーツが変更されている可能性があります。よって、Ⅱで同様の電圧が出るかは不明です。
使用感
筆者環境とライブ事例
まず、ケーブルはメッシュタイプで丈夫そうでありながらも適度なしなやかさがあるので取り回しが容易です。
アコギ用プリアンプ(Birdland Acoustic mixer)、マルチエフェクター(BOSS GT-1)、ルーパー(MXR M303)に分岐ケーブル(namimoriは以下の製品を利用。)でつなぎモバイルバッテリーから電源供給しましたが、エフェクター付属の電源アダプタ使用時と比べても明らかな音質の劣化は感じられませんでした。また、アイソレートされていない電源でのデジ・アナ混在状態となってはいるものの、筆者環境でノイズは気になりませんでした。
namimori的には簡易的なこのシステムで十分ですが、ノイズ・音質によりこだわる方はデジタル・アナログエフェクターの混在は避けたり、ノイズ対策のされたパワーサプライでの使用をおすすめします。
今回namimoriは最大5V/2.1A出力のPHILIPSの10000mAhのモバイルバッテリー(DLP6712N)を使いましたが、エフェクター側の消費電流は合計450mA (@9V) 程度なので電力供給の面で特に問題はなく安定して動作しました(起動時にはより高い負荷がかかりそうですが、全エフェクターを繋いだ状態で問題なく同時に起動できました)。30分程度の使用ではモバイルバッテリーの発熱はそれほど感じられず、Power Cable USB/DC9 のUSBコネクタ部(おそらく変圧回路部分)が若干温かくなる程度でした。
このモバイルバッテリーの容量(10000mAh)とエフェクターの合計消費電流(9Vで450mA)から概算するとおよそ6時間程度もつ計算になります[注2]。エフェクターの種類・個数や使用環境にもよりますが、短時間のミニライブやリハーサル等ではスマホ用モバイルバッテリーで実用的な稼働時間が得られそうです。
※実際に数回ライブで使いましたが、プリアンプ・GT-1の構成で入れ替わり立ち替わりリハ含め合計2~3時間ほどの出番のライブでも上記のモバイルバッテリー1つで完走できました。
注意点:モバイルバッテリーのオートパワーオフ(保護)機能
モバイルバッテリー使用時の注意点としては、モバイルバッテリーの保護機能(オートオフ)によって消費電流が少ない場合に満充電と判定され電源供給が止まる場合があることです(公式サイト内にもアナウンスあり)。具体的にはアナログ歪みペダルやチューナーなどでこの状態に陥ることがあるようです。
保護機能が動作する電流のしきい値はモバイルバッテリーの機種毎に異なりますが、namimoriの環境では、アナログプリアンプ(Birdland Acoustic mixer R2、消費電流11mA程度)単体使用の場合にオートオフで電源供給が止まりました。デジタルエフェクターのGT-1 (200mA)やM303 (225mA)ではそれぞれ単体使用でも問題ありませんでした。※消費電流についてAcoustic mixer R2は筆者による起動中の簡易計測値、GT-1およびM303はマニュアル記載のメーカー公表値。
低消費電流のエフェクターをモバイルバッテリーで使用する場合は他のエフェクターも電源に繋いで消費電流を稼ぐなどの対策が要りそうです(ただし、デジタルエフェクターからの電源ノイズ混入には注意)。また、低電流モード対応のモバイルバッテリー(製品例:①, ②, ③)でこの問題を回避できる場合があります。筆者は製品①でオートオフ問題を回避できました。ただし、低電流モードでも安全対策のため一定時間で給電を終了させる機能が備わっている[参考リンク]場合があり注意が必要です。また、微弱電流で動作するIoT機器用のモバイルバッテリーもあり、こちらはスイッチで給電開始・終了を制御できる様なので用途・対策的にはドンピシャかもしれません。
なお、USB充電アダプタやPCのUSBポートでは上述のプリアンプ単体使用でも給電が止まることはありませんでした。
まとめ:安価にモバイルバッテリーをボードに組み込める
手頃な価格で簡単に手持ちのモバイルバッテリーをエフェクターボードに組み込めます。スタジオ・ステージでのコンセント・電源タップの位置問題や取り合いから解放されるし、セッティング時間の短縮にもつながります。同じアダプタ不要の乾電池駆動と比べても、買い換えや交換の手間が減りますし、モバイルバッテリーの方が残容量の管理もはるかに簡単です(乾電池の場合は残容量がわからないので本番前に全交換するのが常套手段ですが、モバイルバッテリーの場合は本番前に満充電するだけで済みます)。また、単純にいざというときのバックアップ用に常用のモバイルバッテリーとともにギグバッグやギターケースの隙間に常備しておくのもアリだと思います。
持ち運び用以外にも、DAWでの録音時やPCのアンプシミュレータでの使用時等には実機ペダルエフェクターの電源をPCやデスクまわりのUSBポートから手軽に取れて便利です。
エフェクター用の電源やケーブルを手がけるCAJ製ということで信頼性も高く修理保証もついてきます。実際、購入して3年以上経ちましたが不具合なく使えています。ノーブランド・謎メーカー製の類似品も多く出回っていますが保証がなかったりそもそもセンターマイナス仕様でなかったりします。トラブル回避のためにも信頼性の高そうなものを選ぶと良いでしょう。
お手頃価格なのでぜひ気軽に試してみてはいかがでしょうか。
注釈・補足
注1:USB Type-Aポートからの給電について
PCのUSB Type-Aポートからの給電は、USB2.0で5V/500mA、USB3.2で5V/900mA、USB Battery Charging 1.2 対応ポートで5V/1.5Aとなっているようです[参考リンク]。上述のとおり、Power Cable USB/DC9Vで9V/1Aを取り出すには5V/1.8A以上が必要なため、安定して大きな電流を取り出すにはこれらUSB給電規格では不足することが予想されます。一方で、スマホ用USB充電器やモバイルバッテリーはUSB Type-Aポートでも最大5V/2Aやそれ以上の給電能力を持つものが多く存在します。そのため、PCのUSBポートよりもこれら充電器やモバイルバッテリーを使う方が余裕を持って大きな電流を取り出せると思われます。(ただし、Quick Chargeなど専用チップが搭載されたデバイスにのみ対応する充電規格によって大電流を給電する充電器がPower Cable USB/DC9Vに対してその電流値を供給してくれるのかは不明です。)なお、一般に電源側の電流容量は使用機器の定格電流に対して3~5割の余裕を持たせておくことが推奨される[参考リンク]ため、その意味でもなるべく大電流を供給可能なUSBポートを持つモバイルバッテリーやUSB充電器を使う方が良いと思われます。
注2:モバイルバッテリー持続時間の計算
使用モバイルバッテリーのスペックは10000mAh @3.7V (=37Wh) 、エフェクターの合計消費電流は450mA @9V で計算します。
リチウムイオン2次バッテリーにおいて3.7Vから5Vに昇圧するのに一般的には約15%のロスがある
[参考リンク]ため、5Vで使える電力容量は37Wh×0.85=31.45Whとなります。また、9Vでの消費電流450mAなので、Power
cable
USB内の昇圧器の効率を仮に80%とすると5Vで約1.01Aがバッテリーから供給されます。よって、この使用環境でのバッテリーの持続時間は31.45Wh÷(5V×1.01A)=約6.2hと計算されます[参考リンク]。ただし、3.7V→5V・5V→9Vの昇圧のロスがさらに大きい場合や、エフェクトの使用状況によって消費電流が大きくなったり、連続使用で発熱し損失が大きくなるなどして稼働時間が短くなることも当然考えられます。
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